2009年9月某日の聴き流し日記

音質的にはあまり期待できないチビッコCDラジカセに、驚くほど音が悪いこのアルバムをセットして流した時には、ちょっと情けなくなってしまった。
そもそも僕は、エロール・ガーナーのアルバムはこの1枚しか聴いた事がなく、それほど好きなピアニストでも無いので、偉そうな事は言えないのだが、底抜けの明るさとコンサートの楽しさは十分に伝わって来たので、まあ良しとしたのだ。
隣で聴いていた女房は、
「こんな落ち着かないアルバム、寝る時に聴かなくてもいいのに・・・。」
と不満タラタラだったが、この落ち着かなくて、妙に腰が浮きそうになる原因が、彼独特のビハインド・ザ・ビートにある事を説明すると、
「はぁ・・・、変なの・・・。」
との事だった。
エロール・ガーナーは確かにちょっと変わったピアニストである上に僕好みではないのだが、「コンサート・バイ・ザ・シー」は巷で名盤と言われるアルバムなので、
「まぁ、半分寝ながら久しぶりに聴いておこう!」
そう思っただけなのだ。
で、最近こういうのが多い。考えてみると、当初チビラジカセを購入した目的は、
「寝る前に静かなボーカルかピアノを聴こう!」
という事だったが、すぐにそんな目的は忘れてしまい、何故か普段は絶対に聴かない「コンサート・バイ・ザ・シー」のような名盤を流す事が多くなってしまったのだ。
これは例えて言うなら、学生が漱石や鴎外の古典文学を読んで教養を身につけようとするがごとく、半分寝ながらマイルスやコルトレーンを流して、
「一応、名盤も聴いて勉強してますが、何か?」
ぐらいの事が言いたいからなのだ。(←我ながら馬鹿じゃないかと思うが・・・。)

正直言ってこんなアルバム購入した時に流したきりで、先月まで触った事も無かった気がするのだ。ロクに内容も思い出せないくせに、
「今更なぁ・・・。」
なんて偉そうなことをつい言いたくなるのを我慢して聴いてみた。で、感じた事を正直に書くと、
「何ともスタンダードで、正統派の4ビートだよなぁ・・・。」
そう思った。
「バグス・グルーヴ」というアルバムは参加メンバー全員がジャズ界では巨匠と呼ばれる人物ばかりで、その上マイルスとモンクの喧嘩セッションなんて話題性もあるハードバップ期の超名盤なのだが、あまりそういう事に惑わされる事無く、
「非常にクオリティーの高い演奏が続く良いアルバムだ。」
と純粋に感じたのだ。
まぁ、マイルス・デイヴィスのアルバムだから当り前と言えば、当り前過ぎる感想かも知れないけど・・・・。

このアルバムもビバップ期のピアノの怪物バド・パウエルの名盤だ。例に洩れず、ほとんど聴いた記憶がない。
理由は、バド・パウエル全般に言える事だが、妙に緊張感あふれる演奏から鬼気迫る雰囲気が頭に浮かび、同時にその裏にある苦悩の人生を感じてしまい疲れるからだ。
それに、あの弾き急ぐようなジェットコースターアドリブを耳にすると、
「上手いのは分かるけど、胸騒ぎがするよなぁ・・・。」
と毎回感じてしまい、そんな事から、いざバド・パウエルのアルバムを聴くとなると、何がしかの覚悟が必要な気がしてならないのだ。
さて、今回ひっさしぶりに「バド・パウエルの芸術」を聴いたが、はっきり言ってこんなアルバム寝る前に聴くと夢見が悪い。選択ミスもはなはだしいと思った事だった。
中身の話をすると、想像通り胸騒ぎがして、胸をえぐられるような感覚がある。
「どこが?」
と言われてもなかなか説明出来ないのだが、無理に説明すると、僕は「バド・パウエルの芸術」から、『何回聴いても絶対に慣れる事のない微妙な緊張感と、バド・パウエル特有の深みにハマって身動きできなくなるようなロマンティシズムが混在した不安な世界』を感じるという事なのだ。よけい分かり難い話になったかも知れないが、「バド・パウエルの芸術」に僕が持った感覚はこれなのだ。
さて、先月聴いたアルバムで頭に残っているのは、この3枚。
今月に入ってもオヤジは寝る前のひと時、巨匠たちの名盤ジャズに親しんでいる。
「まあ、勉強のつもりで聴くのもイイんじゃないの・・・?」
なんて思いながら・・・。
[Music Erroll Garner] [Music Miles Davis] [Music Bud Powell]
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