ヘレン・メリルの「ジャスト・フレンズ」を聴いてみた。

「私はジジイです。」
なんて白旗を振って全てを諦める訳ではなく、
「ジジイにしか出せない渋い魅力があるのだ!」
などと勝手な理屈をこねて、日々若者に対抗する策をしぶとく考えている。
さて、何でこんな話を始めたのかと言うと、先日ヘレン・メリルとスタン・ゲッツの共演アルバム「ジャスト・フレンズ」を聴いて、年寄りの音楽が分かったような気がしたからだ。ある人のブログからこのアルバムの事を思い出したのだが、改めて聴いてみるとヘレン・メリルもスタン・ゲッツもその音楽が見事に老人なのだ。悪いと言っている訳ではない。とにかく“シブい”なんて表現では済まされない、そんな事は超越してしまった耽美で大甘の音楽なのだ。
「ジャスト・フレンズ」が発売された時には二人とも全盛期をとうに過ぎた60代で、ヘレン・メリルは、往年の『ニューヨークの溜息』なんて言われたハスキー・ボイスは影を潜め、大年増のムード歌謡のような雰囲気を醸し出している。一方のスタン・ゲッツは、『これだけ吹いておけばいいでしょう?』的な力の抜けたアドリブをスルスルと続けるが、その力の抜け加減がムード歌謡に妙にハマッて頷けるのだ。
いやはや、何とも表現のしようが無いアルバムだが、強いて言うなら『人生経験が凝縮し、酸いも甘いも全部分かった上での熱い恋』とでも言おうか、とにかく、刻まれた皺の隙間から滲み出るような演奏は、
「どうじゃ?年寄りも悪くないじゃろ?」
なんて耳元で言われているようで、少々薄気味の悪いオーラにあふれているのだ。
「こういうのが年寄の魅力であり強みなのかも知れないぞ・・・。シブいなんて言ってるうちはまだまだひよっ子かも知れない・・。」
そんな事を思うオヤジなのだ。
[Music Helen Merrill] [Music Stan Getz]




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