ボブ・ジェームスの「アンジェラ」でフュージョンの世界へ突入した話。
僕が高2になった頃、高知の街で流れていた音楽は、歌謡曲を別にすると、テクノポップが非常に多かったように思う。この音楽はその独特のファッションともリンクして、同級生の遊び人達の間では絶大な人気があったのだが、僕はこのテクノ系の音楽がどうもあまり好きになれなかった。
はっきり言って、何がかっこいいのか全然分からなかったのだ。
そんな悶々とした気持ちを吹き飛ばして、新しい音楽の世界の扉を思いっきり開けたアルバムがある。ボブ・ジェームスの「タッチ・ダウン」というアルバムだ。
「お前ら、これからは、こういう音楽を聴かないかんぞ。汗臭いロックばっかり聴きよったら女にもてんぞ~。こっちの方が、ぜんぜんおしゃれやぞ~。」
と、カセットテープを貸してくれたのは、M沢君だった。
そもそも、このM沢君というのは、中学時代はソフトボール部のピッチャーで、学校では、あまり音楽を聴いているイメージは無かったのだが、兄貴の影響で、この手のフュージョン系の音楽や黒人系の音楽を、ちょこちょこ聴いているようだった。
僕はこのアルバムの1曲目「アンジェラ」を聴いた瞬間に、M沢君の言う“おしゃれ”の意味が分かった気がした。そして、それまでの自分の聴いてきた音楽が、一瞬、実に子供っぽく思えた事を覚えている。
次の日、学校でM沢君に
「おい~頼む、タッチ・ダウンを、ダビングしてくれ~。頼む~。」
というと、
「アホ、これはF島にダビングしてもろうたテープぞ。頼むんやったら、F島に頼めや。」
「なに~。F島か?という事は、音源はF島の姉貴やにゃ~。」
と、いう事になった。
F島君は僕が中3の時に初めて組んだバンドのボーカルで、彼の姉がなかなかの音楽通だった事もあって、色々な音楽に詳しかった。
早速、F島君にダビングを頼んで、テープを手に入れ、何度も何度も聴いた記憶がある。
「アンジェラ」はヒュ-バートローズのフルートとボブ・ジェームスのローズピアノが春の草原のような爽やかな雰囲気のメロディーを奏でる曲だ。注意して聴かないと、何て事無いBGMに聴こえてしまうかもしれないが、快適な曲とは、実はこういう曲の事を言うのだと思う。
僕は、この時、初めて真剣にフェンダーのローズピアノの音を聴いて、その何とも言えない心地よい、大人の雰囲気に一発で参ってしまったのだ。
そして、
「これからのバンドは、フュージョンじゃ!。フュージョンを演奏したい!。」
と熱い思いが胸に湧いてきた事を思い出す。(←この頃の僕は、大人の雰囲気とか、おしゃれとか、女にもてるとかのキーワードに実に弱く、すぐにその気になって熱くのめり込む傾向が強かった・・・・・アホやのう・・・。)
ま、そんな熱い思いから、その後の僕は、色々なフュージョンアルバムを片っ端から聴くようになり、大学生の一時期はフュージョンしか聴いてない時期があったほどフュージョンという音楽にのめり込んでいった。
そういえば、大学の1回生の頃、2年上の先輩で、ボブ・ジェームスと呼ばれているキーボードプレイヤーが同じサークルにいた事を思い出した。
なぜ、そんなあだ名が付いたかというと、彼はローズピアノを好んで弾く上に、早弾きのアドリブが出来ない事から、どんな曲でアドリブを弾いても、ボブ・ジェームスみたいに聴こえるからだった。
周りから、
「ボブ・ジェームス!」
と、言われる事に、本人もまんざらでもない顔をしていたな~。
「う~む・・・・懐かしい顔が浮かんできたぞ・・・・。」
とまあ、そんなことを考えながら改めてアルバム「タッチ・ダウン」を聴いてみた。
やっぱり、今聴いてもフルートとローズピアノの組み合わせは実に爽やかでおしゃれな感じがする。僕のような中年のオヤジが思うおしゃれな音とは、“まさしくこういう音なのだ”と感じさせる。
「アンジェラ」は、今思うと僕が、大学4年間を色々なフュージョンバンドで活動し、その後、聴き始めたモダン・ジャズの世界へ続く道への扉を開けた重要な曲だと思うのだ。
Bob James - Angela
[Music Bob James]
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