甲斐バンドの「安奈」をタダで聴いた話。
僕は、高校の3年間、フュージョンを除いた日本人アーティストは、片手で数えられるくらいしか聴いた記憶がない。それも、卒業が近づいた高3の頃に集中していたように思う。
当時は、友人同士の、LPの貸し借りや、ラジオから、面白いロックやフュージョンの洋楽が、次から次へと耳に入ってくる上に、
「邦楽よりも、洋楽の方がレベルが高い!」
なんて、アホな考えを持っていて、最近になって、
「損したなぁ~。あの当時、邦楽でもいい曲がたくさんあっただろうなぁ~。」
と思うのだが、耳に残っている邦楽は、非常に少ない。
ただ、「甲斐バンド」にだけは、忘れられない思い出がある。
僕が「甲斐バンド」を初めて聴いたのは、中学2年の頃で、同級生の女の子が、LPを貸してくれて、カセットテープにダビングした事をぼんやり覚えている。
このアルバムは、中身どころか、タイトルの記憶も全くないのだが、一つだけ非常に印象に残ったのは、甲斐よしひろの、甘くて、セクシーな、カッコいい声だった。
小学校の頃、美空ひばり、とか、前川清の声には、驚いたけど、単純に“声に感動する”という事が、それまで無かったので、
「なるほど~。甲斐よしひろの声は、カッコええぞ~。」
という感覚が、この時から、頭の片隅に居座っていたのだ。
高校になってからは、「HERO」が大ヒットし、その後も、いくつかのヒット曲を街でよく耳にしたが、中でも僕は「安奈」というラブソングが大好きで、確か、下宿の部屋で、アコースティックギター片手に、歌っていたような記憶がある。(←今思い出すと、チョー恥ずかしいのだが・・・。)
そんな時、友人のバンド仲間で、ギターを弾いていたH口君が、学校の休み時間に、
「おい。今晩、県民文化ホールで甲斐バンドのコンサートがあるけんど、行ってみんかや?」
と、言ってきた。
「おう。行く、行く。チケットあるがか?」
「そんなもん、ないわ!」
「ほんなら、どうやって行くがなや?」
「タダで、県民文化ホールへ入るわや。」
「はぁ?」
あきれる僕に、H口君は、県民文化ホールへの侵入方法を話し始めた。それは、こうである。
前にも、書いたけれど、僕達バンドをやっている連中は、何度か、県民文化ホールで演奏をした事があり、この建物の内部構造に詳しかった。
県民文化ホールは大小二つのホールが中にあり、それぞれ入口は別々なのだが、楽屋は内部で、扉1枚隔て、1本の廊下で繋がっていた。
H口君の案は、
「コンサートが始まる直前に、小ホールの通用口から侵入し、小ホールの楽屋廊下から、大ホールの楽屋廊下を通って、ステージの袖まで行き、コンサートのオープニングで、照明が落ちた瞬間に、ステージの端から客席に降りよう。」
というものだった。
1番の問題は、小ホールの楽屋から、大ホールの楽屋へ抜ける1枚の扉で、この扉に鍵が掛かっていれば、僕達の計画は失敗に終わる。
しかし、H口君の計画は、本当に、実にあっけなく成功して、問題の扉にも、鍵は掛かってなく、コンサートの始まる直前に、僕達2人は、大ホールのステージの袖の幕に隠れていた。そして、予定通り、照明が消えた瞬間に、一階の客席に降りた僕達は、本当にタダで、ライブを楽しんでしまったのだ。
この事は、犯罪行為なので、
「ブログの記事にするのはどうかな・・・?」
と思ったけれど、30年近くも前の事で、“若気の至り”で勘弁してもらいたいと思う。
こういう事をしたのは、神に誓って、この時、1回きりです。(←H口君、過去の妙な事をバラして申し訳ない。)
さて、そんなヤバイ事を思い出しながら、この当時聴いていたライブアルバム「100万$ナイト」を聴いてみた。
約30年ぶりに聴く「安奈」は、
「全然色褪せてない、すごくイイい曲や!」
と改めて思い、不覚にも涙が出そうになった。
他に、「ポップコーンをほおばって」や「翼あるもの」、「氷のくちびる」、「きんぽげ」なんかも懐かしく聴く事が出来た。
この頃の「甲斐バンド」の良さは、甲斐よしひろが、一途に歌い上げるラブソングにあると思う。演奏がシンプルで、良い歌詞なので素直に心に響く上に、甲斐よしひろのセクシーな声が何とも言えないカッコイイ雰囲気を作り上げる。
「最近の邦楽も、これぐらいのレベルがあれば、オヤジも十分に楽しめるのになぁ・・・・。」
と思った事だが、まあ、そうもいくまい。
甲斐バンド。改めて大好きですね。素晴らしい!
甲斐バンド : 安奈
[Music 甲斐バンド]
FC2タグ : 甲斐バンド 安奈 100万$ナイト |
Category: 高校3年の頃 | Comment(2) | Trackback(0) | top↑ |