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土佐のオヤジの音楽昔話 ~ あの頃の曲を聴いてみた ~ 綺麗
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サザンオールスターズの「EMANON」と「焼酎レモン」の話。

2010.10.15 Fri
綺麗

 前回の昔話でお話ししたように、僕は大学2年の夏の初めにYちゃんという女の子にふられた。(←その辺の話はこちらです。)今考えてみると、ふられて当然なのだが、この事件は暫くの間僕の心の中に暗い影を落としていた。
 僕は外見的には秋に控えた文化祭やライブに向けてバンドの練習をしたり、車の免許を取ったり、新しいベースを購入する資金集めにバイトをしたりと精力的に動いていたが、実際は心の奥底に“暗いわだかまり”を持ちつつ毎日を過ごしていたのだ。
 今回のお話は、この“暗いわだかまり”が噴出して爆発した一夜のお話をしたいと思う。簡単に言うと『ふられ男のヤケ酒話』で、面白くも何ともないのだが、毎度の事ながら、ある曲と一緒になって思い出の中に貼りついているので、まぁ、お付き合い願いたい。
 さて、今お話したように、僕は外見的には充実した夏を送っていた。相変わらず音楽三昧、バンド三昧の日々で、四六時中何らかの音楽を楽しんでいたが、この夏、特に覚えているのは発売されたばかりのサザンオールスターズのアルバム「綺麗」を聴いていた事だ。
 「綺麗」はサザンの6枚目のオリジナルアルバムで、当時流行りだったテクノポップの影響が強く感じられ、彼らの音楽的な懐の深さがよく分かる名盤だが、当時の僕はテクノポップが嫌いだった事もあり、最初に聴いた時に、
「ん?こりゃ~サザンも妙な方向へ向かい始めたか・・・?もうちょっとロック色が強い方がイイのに・・・。」
 なんて事を考えた記憶がある。
 しかし、そんな第一印象とは裏腹に、何回か聴き込むと、
「このアルバム、ジワリと心に響く名曲が並ぶ渋いアルバムやないか・・・。」
 そう考え始め、哀愁漂うストーリーを連想させる曲の数々に、
「ほぉ~・・こりゃぁまっことエエぞ!」
 そう思い始めるのに、あまり時間はかからなかったと記憶している。
 中でも大人の洒落た恋愛をイメージさせる「EMANON(エマノン)」なる曲は、ふられた自分の境遇を重ね合わせるのにピッタリで、耳にする度にYちゃんの笑顔が頭に浮かび、ド~~ンと落ち込んでは、
「はぁ~~~。」
 なんて溜息をついていた事を覚えている。
 そして、いつの間にか「EMANON」は頭の中にピッタリと貼りついて離れない曲になってしまい、落ち込む事が分かっているのに、僕は「EMANON」ばかりを5回連続で録音したカセットテープを作り、夜になるとアパートの自室でこのテープを流しながら感傷に浸る事を、夏中繰り返していた。
 さて、ここで話は全く変わるのだが、この年の夏休みが終ろうとする頃、下北沢に住んでいた高校時代の友人達の間である飲み屋の事が話題になっていた。
 その飲み屋は名前を「焼とん椿」と言い、友人の一人のH口君が通っていた銭湯の建物の一角を間借りするようにポツンと立っていた事を覚えている。
 H口君が言うには、
「店内は10人も坐ると満員になるカウンターしかなく、椅子は一升瓶の木箱を立てた上に座布団を敷いた粗末なもので、メニューは“焼とん”とちょっとしたツマミ程度だ。」
 との事だった。にもかかわらず、
「いつ行っても、店内は“焼とん”を焼く煙が充満していて、値段が安いせいか客が多く活気がある。」
 とも言っていた。
 しかし、これだけなら
『何処にでもある安い飲み屋です。』
 というだけで、H口君もそうそう話題にする事も無いのだが、実はこの飲み屋には謎のメニューがあった。
 それは「焼酎レモン」なる1杯200円の飲み物で、1合も入らないような小さなガラスコップに凍る寸前まで冷された透明の液体が注がれている。
 口に含むと、レモンの味が非常に濃く、焼酎以外に何かがブレンドされている事は分かるのだが、それが一体何なのかは分からない。この「焼酎レモン」は、味が濃い“焼とん”と一緒に飲むと口がさっぱりして実に気持ちが良い半面、アルコール度数が非常に高く、H口君が説明するに、
「ちょっと酔うなら2杯、普通に酔うなら3杯、ベロベロになるなら5杯、気を失うなら7杯。」
 との事であった。そして、
「調子に乗った客が「焼酎レモン」を10杯以上飲んで、椅子から転がり落ちて、動かなくなったのを見たぞ!!」
 なんて事を話していたのだ。
 さて、こういう話を聴くと、昔から我々の仲間は俄然張り切る。意味も無く非常に張り切るのだ。
「ほ~~、『焼酎レモン』とやらはそんなに凄いんかい・・・。一回試してみんとイカンぞこれは・・。」
 皆、すぐにそんな事を言い始め、ある土曜日の夕方、僕とH口君、H口君の彼女、N田君の4人で「焼とん椿」を目指した事を覚えている。
 まだ時間が早かったせいか、店内は空いていて、我々4名は、
「おお!ラッキー!ウヘヘヘ~」
 なんて言いながらカウンターの隅に陣取り、とりあえずはメインの“焼とん”を数種類注文し、ビールで乾杯した。そして、早速H口君の彼女以外の3人の男共は、「焼酎レモン」を注文したのだ。
 一口飲んでみると、H口君の言うように、レモンの味が強く、口に残った“焼とん”の味をすっきり流してくれる。僕は、
「おお!こりゃ美味いねぇ~。」
 なんて言いながら、2杯目のおかわりを頼んでいた。
 暫く飲んでいると、回りの友人達が、
「おい、K本(←オヤジの本名です。)大丈夫か?これで5杯目だぞ!」
 なんて言うのが聞こえたが、気分的には普段飲み屋で飲んでいる感覚と変わらない。
「ああ、分かってるよ。まぁ、あと1杯ぐらいなら大丈夫だよ。」
 そう言いつつ飲んでいたが、この時の僕は密かに、
「今日は普段より少し深酒しよう!いつもよりも少し多めに飲んで、皆と大騒ぎして、そしてキッパリYちゃんの事は忘れよう!明日からこのモヤモヤとはオサラバじゃ!」
 そんな事を考えて、酒に対して妙に意気込んでいたのだ。
 その後、何の話をしながらどんな飲み方をしたのか忘れてしまったが、僕は「焼酎レモン」を8杯おかわりした所で完全に記憶を無くした。店から自分のアパートに帰るまでの事は何一つ覚えていないのである。
 ここからは、翌日H口君とN田君から聞いた話を書くが、僕は「焼とん椿」を出た後、下北沢の商店街を奇声を上げながら走り回り、土曜の夜の、人でごったがえす下北沢駅横の踏切を、遮断機が下りているにもかかわらず、乗り越えようとして電車に警笛を鳴らされ、ホームの駅員に怒鳴られ、友人達に押え込まれ、最終的には腰が抜けて動けなくなり、H口君とN田君に抱えられてアパートまで帰ったらしかった。
 僕はその晩、夜中に猛烈な喉の渇きで目を覚まし、流しで水道の蛇口に直接口を付けて水をガブガブ飲んだ。そしてフラフラでカセットテープのプレイボタンを押すと、例の5回連続の「EMANON」のテープが流れ始めた記憶がある。
 ボンヤリと聴いていると、突然強烈な吐き気が襲ってきて、流しに飛んで行き、胃の中の物を全て吐いた。それでも吐き気は治まらず、結局僕は、朝まで何度も涙を流しながら胃液を吐き続けた。そして、その間ずっと「EMANON」が流れていた。
 当然、翌日は立ち上がれない程の二日酔いで、割れそうな頭を抱えて寝ていた事を覚えている。
 ・・・とまぁ、簡単に言うと、
『ふられた男がヤケ酒飲んで、記憶を失いました。まるっきり馬鹿者です。』
 という情けない話なのだが、僕の中では思い出の底に深く刻まれた出来事なのだ。
 冷静に考えると、実際に「EMANON」が部屋に流れていたのは最初に吐いた時だけなのだろうが、僕は頭の中に、朝まで延々と「EMANON」が流れているイメージを持ち続けている。
 先日、数年ぶりに「EMANON」を聴いたが、恐ろしい事に前奏が流れ始めただけで、僕の頭の中にはこの年の夏休みの風景がボンヤリと浮かんできた。
 それは、「焼とん椿」のカウンターで、何となくモヤモヤと「焼酎レモン」を飲み続ける自分の姿であり、真っ暗なアパートの部屋で、流しにへばりついてゲーゲーと吐き続ける自分の情けない姿であり、Yちゃんの笑顔であり、下北沢の風景であった。
 僕は、
「つくづく、曲の力は凄いもんじゃ・・。」
 そう思いながら、
「もしも『焼とん椿』が現在でも下北沢に存在するなら、『EMANON』を聴きながら再び「焼酎レモン」をじっくりと味わってみたい。」
 そんな事を考えてしまった。
 昔のように8杯もおかわりする自信は全く無いが、足元がおぼつかなくなるくらいまでは「焼酎レモン」を飲んでみたいと思うのだ。多分、涙酒になりそうな気がするが、「EMANON」「焼酎レモン」の組み合わせは、そういうものだとずっと思っているのだ。

EMANON : サザンオールスターズ


 
[M;サザンオールスターズ]


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