おでんと高橋真梨子

オヤジはこの「おでん」なるものが非常に好きで、冬の寒い日に、暖かいお酒と一緒にアツアツのコンニャクや、よく味がしみたホカホカの大根を食べる事に人生の幸せを感じる単純な人間なのだ。
おでんを食べながら三男が、
「ねぇお父さん。おでん屋ってあるの?」
なんて事を聞くので、
「あるさ!おでん屋はいいぞ!」
そう言いながら長男に、
「お前も、大学生になったら冬のデートはおでん屋がいいぞ!熱いおでんを食べながら熱燗を差しつ差されつ・・・これが、おでん屋の醍醐味よ。なぁ、母さん!」
そう言うと、長男にも女房にも完全に無視されてしまった。次男は一人、
「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ~」
と、笑っていたけど・・・・。
さて、相変わらず前置きが長いのだが、オヤジはこの時、おでんを食べながら一人の女性歌手の事を頭に浮かべていたのだ。それは誰かと言うと、高橋真梨子なのだ。
突然、高橋真梨子と言われても、
「訳が分からんぞ!おい!」
なんて言われそうなので、ちょっと説明させてもらいたい。

僕が彼女のアルバムを一番聴いていたのは大学2回生の1983年頃だ。まだ「桃色吐息」がヒットする前で、彼女をテレビで見る事もあまり無かったのだが、バンドの仲間内では、
『元、ペドロ&カプリシャスで活躍した実力派の歌手!!』
というイメージが強くあり、ちょっとカリスマ的な存在だったのだ。
当時の僕は生意気な事に、彼女の醸し出す曲の雰囲気から、
「う~む・・・これぞ大人の女性なのだ!」
などと勝手に思い込み、
「色恋関係なく、こういう大人の女性と静かに語り合いながら、ウィスキーを飲むと絶対楽しいだろうなぁ・・・。」
そんな事をボンヤリ考えていた事を思い出す。そして46歳になった現在でも、僕は昔と同じように高橋真梨子にお洒落で安心出来る大人の女性の魅力を感じているのだ。
しかしこの感覚の一方で、オヤジはここ数年来、高橋真梨子からなごみを感じる「純和風」の大人の雰囲気も強く感じるようになっている。これは、彼女が日本酒のCMの曲を歌っていた事に影響を受けているのだが、(←考えてみるとバカみたいに単純な話だが・・・。)理由は何であれオヤジは、
「これは新しい高橋真梨子の魅力なのだ!」
と、またも勝手な解釈をしおり、最近では僕の頭の中の高橋真梨子のイメージは、すっかり「和」になって定着しているのだ。
そこで「おでん」なのだ。
この日おでんを食べながら僕の頭の中に浮かんだのは、
『ちょっと小奇麗なおでん屋でカウンターに座り、女将の高橋真梨子と何て事ない話をしながら「おでん」と共に熱燗を飲んでいるオヤジの図』
なのだ。
あまりに異常な光景なので自分でも呆れてしまうが、「おでん」を見ていると、おでん屋のカウンターの中から楽しい話をする高橋真梨子が頭に浮かんできてしょうがないのだ。
まぁこれはオヤジが常々、
「高橋真梨子みたいな雰囲気を持った大人の女性の友人が欲しいものだ・・・。」
と思っている事から出て来る妄想なのだが・・・・。

オヤジは若い頃に、彼女のように尊敬と憧れをもって聴き続ける事が出来る女性歌手に出会った事は、実に良かったと思っている。彼女の音楽を初めて聴いてから20年以上も、
「本物のプロっていうのはこういうのだぞ!」
と感じているのだ。
高橋真梨子の楽曲は、そこらのおばちゃんがカラオケで簡単に歌えるようなものじゃない。大学生の頃、彼女の曲を何曲かコピーしてバンドで演奏した事があるが、音大の声楽科に通うボーカルの女の子が、
「いざ歌ってみると、高橋真梨子の歌はホント難しいわ・・・。」
そう言っていた事を思い出す。
しかし、高橋真梨子は歌の難しさなど聴く者に全く感じさせないばかりか、包み込むような独特な雰囲気で歌い上げ、その中に女性の寂しさ、強さ、可愛らしさ、熱い想い等々を強烈に意識させるのだ。ここに高橋真梨子の音楽の真骨頂がある訳で、
「こういう凄い女性歌手がいるんだぞ。」
と、時々思い出すだけで、音楽を楽しむ幅が随分広がった気がするのだ。
今回、昔聴いていた曲が聴きたくなって、80年代に聴いたアルバムのテープを探してみたが残念な事に見つからなかった。しょうがなく、
「あの頃のアルバムは改めてYUTAYAでレンタルしよう!」
と諦めて、「リプレイ」というベストアルバムを流す事にした。

とにかく、「リプレイ」全編を聴いてみて感じるのが、これほど情景が頭に浮かび、歌詞の意味が心に響く曲が連続するアルバムも珍しいという事だ。
秋の夜長、日本酒を飲みながら耳を傾ける高橋真梨子の歌声は、
「艶やかで落ち着いた本当の大人の世界はこういうものだよ!」
そんな事を教えてくれると確信したのだ。
高橋真梨子- for you...
[Music 高橋真梨子]
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Category: 憧れの巨匠話 | Comment(7) | Trackback(0) | top↑ |